映像ディレクターとは?仕事内容や求められるスキル・役割を解説


映像ディレクターとはどんな職業なのか。仕事内容は?どんなスキルが必要?ディレクターと聞くと、ふわっとして曖昧だけど、とても重要なお仕事であることは確か。そんな認識ではないでしょうか。
本記事では、プロの映像ディレクターと一緒にお仕事をさせていただいてる筆者が、映像ディレクターの仕事内容や必要なスキル、現場でどのようなことをしているのか紹介させていただきます。
映像制作をする際の予算に必ず入ってくる「ディレクション」の内訳が知りたい方や、映像ディレクターはどんな役割を担っているか知りたい方のヒントになれば幸いです。
目次
映像ディレクターとは?

映像ディレクターとは、テレビを始め、映画やCM、ミュージックビデオや広告用動画などの映像作品を制作するプロジェクトの中で、総合的な指揮を執る人のこと。
一方、映像プロデューサーは、その更に上流であるクライアントとの交渉・予算管理などを行い、会社の利益と人件費等を照らし合わせたり、プロジェクトの大枠・方針を決めます。
映像ディレクターは、プロデューサーが決めたコンセプトや映像の内容、その中に含まれた意図などを汲み取り、より具体的なコンテンツ企画・構成・演出を決め、現場で関わる多くの人を取りまとめていく、いわば「現場監督」とも言える存在です。
最近では、映像ディレクターと映像クリエイターの役割はグラデーションのようになっており、どこからどこまでと仕事の範囲に明確な線を引くのが難しくなってきています。というのも、映像ディレクターは、必要であれば自分で撮影をしたり編集作業も行うこともあるからです。
ディレクターは現場の仕事を知らないとできない仕事であるとも言えます。撮影映像の使える部分のピックアップ(判断)や編集、デザインの世界観の決定や適切な文言の選定、文字情報のビジュアライズ化、クオリティ管理まで自分が理解できていなければ適切な指示は出せません。現場経験を積んだ上で成り立つ仕事であるとも言えるでしょう。
これはWebディレクターにも言えることかもしれませんね!
もちろん、関わる案件の規模によって映像ディレクションが難しいケースもあるでしょう。
ただし、今の時代は業界全体の案件数・規模が年々変化しており、新しいメディアやツールもどんどん登場しています。一方、案件1つ1つの単位では低予算化が進むなど、状況の移り変わりも早いです。
その中で、お声がけいただくお仕事については「前例がない」などと思わず、「前例がないからこそ一緒に挑戦する」気概を持って取り組むことも大切だと考えています。
映像ディレクター自身が自分の役割を狭めず、可能性を広げていく。そして、新たなことに挑戦し、その経験が現場のデザイナーやクリエイター、エディターにも還元され、それぞれのスキルを底上げしていくことに繋がっていきます。
もちろん、制作するクリエイティブの品質には責任を持つことが大前提です。
映像ディレクターは、たくさんの選択肢の中から最適なものを選び、決定し、遂行することを前提として、さまざまな立場の人を繋ぐまとめ役。クライアントから課題や問題、奥底にある本音を引き出し、クライアントの先にいる人の理想の未来像を捉え、映像で実現していく。そこを誰よりも強く牽引していく存在です。
映像ディレクターの仕事内容
映像ディレクターの仕事は、前述の通り多岐に渡り、なおかつ範囲も明確ではないというのが正直なところです。
しかし、共通項はあるので、映像ディレクターなら必ずと言っていいほどこういう業務を行っている、という部分をピックアップして解説していきます。
企画・スケジューリング
映像制作の目的や映像全体のコンセプト、映像を視聴するターゲット等を決める企画工程は最重要項目です。
いくらカッコイイ映像を作っても、目的がブレた映像や視聴するターゲットを意識した演出ができていないと、目的を果たせない映像=誰にも見られないものになってしまいます。
ここでは、プロジェクト全体を俯瞰し、目的に対して最適な企画を立案できる能力が求められます。企画が固まったら、何に・どのくらいの時間や費用がかかるのかを算出し、全体のスケジュール設計や細かな予算・割当てを検討します。
構成/メンバーアサイン
映像プロデューサー(またはプロジェクトマネージャー等、会社の決済権を持つ人)が決めた予算や方針をベースに、具体的な企画内容にまとめていきます。
内容が可視化できてくると、映像全体の構成・シナリオを作れるようになります。それらを、誰が見ても「こういう映像になるんだな」と想定できるよう絵コンテにまとめていきます。制作現場で適切なディレクションができるよう、完成した映像のイメージを固めて、関わるメンバーと共通認識を持つことが大切です。
絵コンテについてはこちらの記事で具体的に解説しています。

【動画制作】絵コンテの作り方・重要ポイント解説【サンプルあり】
具体的な内容が定まったら、出演者のキャスティング・必要であればオーディションの実施、デザイナーやアニメーター、エディターの選定、ロケーションハンティング(ロケハン)などを行い、制作体制を整えます。
必要素材を集める
絵コンテができると、映像に必要な素材が明確になります。イラストなのか、写真なのか、動画素材なのか、CGなのか、案件毎に違います。例えば、オリジナルイラストが必要な映像であれば、イラストレーターへ依頼をします。
実写映像であれば、撮影する際の照明・音響・美術・カメラマンなど各スタッフへの的確な指示を出し、欲しい映像を撮るために全体の進行管理をします。その際、大切なのは絵コンテで映像の演出イメージを伝え、全員が同じ目的に向かって動けるように指揮をとることです。
撮影

仮に制作するものが実写映像のプロジェクトだとしたら、撮影という工程が必須です。絵コンテを元に、各シーンに必要な映像を撮影します。
映像ディレクターは仕上がりのイメージをより具体的に頭に描き、カメラマンへ撮影の構図やカメラアングル、光の入り方などの指示を出しつつ、被写体の位置や背景の映り込みなどを確認します。
良い映像を撮るだけではなく、1日のスケジュールをスムーズ進行させるためには、映像ディレクターの都度の判断力が肝です。キャストもカメラマンもスタッフも、誰しも時間は有限です。撮影の日のために時間を確保して臨んできてくれます。その時間を最大限に活かし、最善を尽くします。時には、天気に恵まれないこともありますし、キャストの方のメンタルケアが必要なケース、想定外のことが発生することもあるため、臨機応変に対応する力も求められます。
編集/品質管理

各シーンの撮影が無事完了したら、撮影した映像の中で要不要を取捨選択します。そして、残した良い映像を一つの映像に仕上げる編集作業を行います。素材をトリミングしたり、テロップやBGM、効果音などを入れ、視聴者に伝わる映像へと仕上げていきます。
編集した映像をクライアントにチェックしてもらい、フィードバックをいただいた場合は、修正・調整を行います。状況によっては映像ディレクター自ら、修正対応をすることもあります。
限られた映像の尺の中に、どのカットを入れてどのカットを削るべきか?どのようなエフェクトやアニメーションが効果的か?BGMは全体の世界観をより一層引き立てているか?効果音は適切なタイミングで設定されているか?多角的に確認し、よりブラッシュアップできる部分はないか目を光らせ適切な指示を出すのも映像ディレクターの仕事です。
映像ディレクターに求められる能力/スキル
映像ディレクターになるには、必要な資格は特にありません。あった方が良いとは言えますが、それ以上に必要なスキルがたくさんあります。
映像作品を企画・演出するだけでなく、構成や取材、撮影、編集などの多くの工程をディレクターが行う場合があります。そのため、映像制作に関する幅広い知識や技術・経験が求められることも多々あります。具体的には以下のスキルは前提条件として求められます。
マネジメントスキル
映像ディレクターは多くのスタッフを統率して一つの作品を作り上げる仕事。リーダーシップやマネジメントスキルは必須です。スケジュールを守れているか。制作進行に滞りがないか。出演者や各メンバーと連携をし、制作現場を健全に維持すること、チームワークをより強固にしていくことも大切です。
また、映像プロデューサーやクライアントの意向を汲みとり、見えるものへと変換する力も重要です。
コミュニケーションスキル
マネジメントスキルと重複する部分もありますが、制作をスムーズに進めるためには、関係各所との正確な意思疎通が必要です。クライアントの要望・意図をもっとも理解し、各メンバーに齟齬なく伝達することや、各メンバーの心理的状態などを確認しながら進行していきます。
コミュニケーションスキルは、人のことを考えて動けることが基本です。一人の人としてのあり方も影響してくる部分なので、ディレクターによってプロジェクトの進み方ややりやすさは変わってきます。
完全に自戒を込めてます…
企画・演出力
魅力的な映像を創るためには、企画力・演出力は欠かせません。視聴者の心に届く言葉選び・ストーリー・演出・シナリオや構成を考える力、思わず観てしまうビジュアルを作る美的センスなど。
また、本来の制作の目的やクライアントがもつ課題を解決できる映像にするためには、マーケティング・ビジネス的観点も重要です。その時の情勢や今のトレンド、人々の心理状況やターゲットの悩み。映像制作の目的によって重視する部分は変わりますが、その目的に沿った企画・演出を考え生み出す力が大切です。
映像制作スキル/知識
携わる映像制作のジャンルは多岐に渡ることが多いでしょう。企業紹介や商品・サービス紹介、ブランディング向けの映像など。初めて関わる業界や商品を映像化するには、まず学ぶことから始まります。その商材について、クライアントと対等に話せるまで知識を得ないと、本来の目的や課題を引き出すことは難しいでしょう。
そのため、新しい情報をインプットする力、学習力も求められます。
さらに、最近では映像ディレクター自ら編集を担ったり、グラフィックデザインを手掛けたりと自分で手を動かすことも多いです。映像制作に関する知識・技術があればあるほど、適切なディレクションが可能になります。
制作に関する知識があれば、その企画が実現可能かどうかの判断もできます。制作メンバーに曖昧ではなく具体的な指示を出したり、ディレクション業務の質の底上げにも繋がります。
なによりも、自分から動く主体性が重要なことがわかります。
映像を創ることが純粋に好きで楽しい!もっと創りたい!という初心の気持ちを忘れないことも大切ですよね。
さいごに
本記事では、映像ディレクターとは何か、疑問点に回答する形でまとめてみました。
個人的なお話をすると、筆者は個人で動画・映像制作をすることが多いため、映像ディレクションの仕事も必然的に一人で対応するケースが多いです。
もちろん、オリジナルイラストが必要な場合はイラストレーター、一人では撮影できない映像にはカメラマン、実写映像の編集で人手が足りない場合はエディターの方々に力を借りてプロジェクトを進行します。一人で完結できるか、メンバーの力を借りるか、そこは臨機応変に柔軟に判断しています。
時には、先輩映像ディレクターのアシスタントとして撮影に同行させていただいたり、とにかく編集業務に集中する期間があったりと、色々な経験をさせていただいている最中です。そんな中で、映像ディレクターってどういう人?と聞かれてうまく言葉にできなかったこともあり、言語化しておきたかったので記事にしました。
今は、映像に関するあらゆることを自らの手と頭を動かして形にしていき、毎日レベルアップできるよう努めています。
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