判例からみるイラストの著作権【パンダイラスト事件】

イラスト
とも
とも

こんにちは!デザイナーのともです。

以前に執筆したイラストの著作権の記事に引き続き、今回は具体的な判例をもとに著作権の侵害について学んでみようと思います!

著作権の侵害ってどうのように起こるのか、どういった物が侵害にあたるのか調べてみても明確に断言されたものは出てきません。なぜなら、その時の状況や、経緯、裁判の争点、裁判官の裁量によって変わってくるからです。

とも

しかし、過去の判例から学び取ることは可能です。私自身の興味もあり、この記事を執筆してみることにしました!

なぜ判例を知ることが必要なのか

あらかじめ記載しておきます。私は弁理士でも弁護士でもありません。法律関連の部分については解説いたしません。あくまで、裁判所が運営している[知的財産 裁判例集]から検索し、その内容と資料に基づいてクリエイターの目線から、学べることを発信していきます。

裁判所判例検索ページ

とも

この記事を読むことで、イラストレーター側もイラストを依頼する側も、過去の著作権の判例から、トラブル回避に繋げたいという目的があります。

判例の解説

今回、取り扱う判例は【平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件】です。別名「パンダイラスト事件」とも言われています。内容は、下記の図解をご参照ください。

訴えたのはパンダのイラストを作成したイラストレーターのAさん。

訴えられたのはお菓子を販売した「販売会社B」とデザインの作成を行なった「補助参加人(外注先C)」です。対象の著作物は、パンダのイラストを使用したお菓子のパッケージとパンダのイラストを印字した内包されたお菓子です。

裁判に至るまでの経緯です。

裁判所の判断

今回の事件の争点は4点ありました。

争点1 著作権(複製権,譲渡権)、著作者人格権を侵害したか

結論から言うと著作権・著作者人格権の侵害は認められました。

今回の争点1では「著作権」「著作者人格権-氏名表示権」「著作者人格権-同一性保持権」の侵害について下記のように判決がなされました。

【著作権侵害及びそのおそれの有無】

とも

イラストでの著作権の侵害時、どのように判断されるか記載された判決文になります、ぜひ読んでみてください。

本件イラストと被告イラストは,いずれも,互いの額を接して向き合う大小2頭のパンダを描いたものであり,2頭のパンダの姿勢,表情,大きさの比などを含めた構成が類似しており,表現上の本質的な特徴が同一である。そして,その同一性の程度は非常に高いものであるから,被告イラストは本件イラストに依拠して有形的に再製されたものであると推認することができる。

出典元:知的財産判例集 平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件 PDF資料

【著作者人格権(氏名表示権)の記載】

とも

著作者人格権の氏名表示権とは著作物を掲載する際に著作者の氏名またはペンネームの表示をするか、しないかを決定できる権利です。今回は前提として無断で使用したことになりますので、必然的に著作者人格権を無視した行為になってしまいます。

被告商品には,原告の氏名又はペンネームが表示されていないから,被告行為は,原告の氏名表示権(著作権法19条1項)を侵害するものである。

出典元:知的財産判例集 平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件 PDF資料

【著作者人格権(同一性保持権)の記載】

とも

著作者人格権の同一性保持権とは、著作物(イラスト)を著作者の意向に反して勝手に改変できないように保護する権利です。今回の事例では、いくつかの改変がみられます。

被告イラストは,パンダの黒く示されている足及び耳について灰色の線で縁取られている部分があり,パンダの目の部分が黒一色で表され,白い部分がないほか,大きい方のパンダの耳の形が半円に近い形であり,2頭の鼻と口を示す線がより太く表されており,本件イラストと相違している部分があるところ,これらは原告に無断で変更されており,原告の意に反して変更されたと認められるから,被告行為は,原告の同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害するものである。

出典元:知的財産判例集 平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件 PDF資料
とも

結論:著作権の侵害、著作者人格権の侵害は認められました。

争点2 著作権、著作者人格権の侵害については意図的な過失であるか

ここで争われたのは、販売会社側が意図的に著作権を侵害したかということです。

販売会社側は、デザインを提案したのは「補助参加人(外注先A)」であり、販売会社は使用したイラストの著作権の所在について事実確認が困難であったので意図的ではないと主張していました。

裁判所の判断は下記のようになりました。

被告らは,いずれも加工食品の製造及び販売等を業とする株式会社であり,業として,被告商品を販売していたのであるから,その製造を第三者に委託していたとしても,補助参加人等に対して被告イラストの作成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意義務を負っていたと認めるのが相当である。また,前記認定のとおり,本件イラストと被告イラストの同一性の程度が非常に高いものであったことからしても,被告らが上記のような確認をしていれば,著作権及び著作者人格権の侵害を回避することは十分に可能であったと考えられる。にもかかわらず,被告らは,上記のような確認を怠ったものであるから,上記の注意義務違反が認められる。。

出典元:知的財産判例集 平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件 PDF資料

上記のように販売会社及び、デザイン提案者の第三者の外注先が著作権についての知識を有し、確認をしていれば、侵害を回避することは可能であったと記載されております。

とも

被告側の制作過程の確認・注意義務が怠っていたことが認められ、故意に侵害したと判断されました。の外注先の確認も販売会社の責務ということになります。

争点3 損害の発生の有無及びその額について

この項目では、著作権(複製権,譲渡権)侵害による損害賠償、著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害による慰謝料、弁護士費用などの内訳が記載されております。内容は省略いたします。

下記は損害についての金額の詳細です。 判決文の主文より引用しております。

被告らは,原告に対し,連帯して,42万3260円及び別紙遅延損害金目録の「元本額」欄記載の各金員に対する同「起算日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

出典元:知的財産判例集 平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件 PDF資料 主文より引用
とも

今回の裁判では賠償金含め、約42万円+aの支払いが命じられました。たった1枚のイラストの著作権侵害で販売会社の商品の中止、回収作業など含め大きな時間と労力、金額がかかってしまったと言えます。そのぐらい、著作権の侵害というのは重大なことだといえます。

争点4 謝罪広告等の必要性について

この項目では、イラストレーターが名誉回復の措置として販売会社に対して謝罪広告の掲載を訴えました。下記判決内容になります。

原告は,原告が本件イラストの著作者であることを確保し,原告の名誉若しくは声望を回復するためには,被告らにより謝罪広告目録記載の内容で謝罪広告を掲載する必要があると主張する。しかしながら,被告イラストの使用態様等に照らし,被告商品の販売により原告の名誉,声望が毀損されたとは認められず,また,被告らが本件の訴訟提起後に被告商品の回収に向けて動いていることなどにも照らせば,原告が著作者であることを確保するため,差止めや金銭賠償等に加えて,謝罪広告を掲載する必要があるとは認められない。

出典元:知的財産判例集 平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件 PDF資料 
名前

今回の事件はイラストレーターの名誉が毀損されておらず、食品販売会社側が商品の回収、差止めに向けて動いていることから謝罪広告の掲載は必要ないと判断されました。

今回のNGポイント

著作権の侵害はしない

当たり前ですが既存するイラストを無断で使用することは著作権の侵害に当たります。トレース(複写)や加工も著作権の侵害+著作者人格権の侵害にあたります。

著作権については下記の記事がおすすめです

作成経緯の確認をしなかった

今回の事件はデザインの作成、提案を行った「補助参加人(外注先C)」による著作権の侵害が起こり、依頼主側の販売会社の確認の不足により商品を販売し、訴訟に至ってしまいました。

クリエイターとしてこの事件は人ごとではないなと思います。

私たち制作者側がどのようにイラストにしたのか経緯を伝えることはもちろんですが、依頼側からも確認することでこのようなトラブルの回避が可能になります。

確認項目の例

  • 作成されたイラストは参考(構図や色も含め)にしたものがあるか
  • 素材だった場合は素材元の規約を確認

トラブル回避のポイント

作成経緯を確認する

今回の事件では「補助参加人(外注先C)」による、デザインの提案が発端でした。

もしかすると作成した当事者は「参考」にしたという認識だったのかもしれません。依頼者側も作成者のオリジナルと認識していた可能性があります。

お互いのコミュニケーションの中で、作成経緯の確認と著作権の知識があれば今回のトラブルは回避できたのかもしれません。

誰に依頼するかを重視する

既に企業とのやりとりや実績があるイラストレーターやデザイナーであれば、ライセンス契約か著作権譲渡での契約をしていることが大半なので、著作権譲渡の話や、知識もあります。

また、依頼する前にポートフォリオを見せてもらう。打ち合わせで著作権の譲渡や知識について伺ってみるとよいでしょう。

依頼者側も著作権の知識をしっかり持つ

制作者側は大前提で著作権の認識は持つべきです。しかし、依頼者側も著作権の知識は身に付けておくべきです。訴えられるのは販売する依頼者側なのです。

今回の裁判では著作権を侵害しするデザインを作成した外注先にも非が認められていますが、確認を怠った販売会社側も同じ責任を課されています。

依頼時に素材を使う場合の利用規約の確認と、既存する著作物の著作権を侵害しないようにして欲しいという一文をいれるだけでもトラブルの回避に繋がります。

まとめ

今回の判例を通じ、トラブルを回避するためには作成経緯の確認も含め、密なコミュニケーションが重要だとご理解いただけたのではないでしょうか?

Wepotはディレクション、デザイナー、イラストレーター、などそれぞれの強みを持ったメンバーが在籍しており、あなた専用のクリエイティブチームを作ります。

イラストにおけるやりとりや不安は全て私たちにお任せください。イラストは見てくれる人にサービスや商品のメッセージを強く伝えるパワーがあります。

ビジネスでもイラストの伝える力を最大限に活用してみてください!

ご依頼・ご相談はこちら

お客様の課題解決に最適なメンバーアサインでスムーズなプロジェクト進行をいたします。制作して終わりではなく、お客様が求める成果に結びつくご提案をさせていただきます。

この記事がシェアできます

この記事を書いた人
とも

とも
グラフィックデザイナー/イラストレーター/Webデザイナー/動画クリエイター

とも
グラフィックデザイナー/イラストレーター/Webデザイナー/動画クリエイター

ともに寄り添い、挑み続ける。をミッションとし、デザイナー・イラストレーターとして活動しています。 お客様と一緒にクリエイティブを作り上げることを大切にしています。動物が大好きです。好きな言葉は「温故知新」!

  • Wepotについて

    アイコン

    Wepotはデジタルクリエイティブで課題を抱えるすべての人への解決策を提示できます。

  • 実績一覧

    アイコン

    Wepotには多種多様な実績があります。メンバーの強みが生きた実績をご覧ください。

  • 制作のご相談

    アイコン

    現在の課題やお悩みをお聞かせください。あなただけのクリエイティブチームを編成し解決へと導きます。